平間至 × ATSUSHI × スタッフ 対談 <後半>
———過去3回のガマロックでいちばん記憶に残っていることや課題は。
ATSUSHI:雄歩はひどかったな(笑)。2回目だか3回目だかのときに、トリでの出演を控えているときに「ATSUSHIさん、もうダメです」って泣きついてきたからな……。
雄歩:タブーとされている、出演前のアーティストに話しかけるという(笑)。感動が襲って来て、準備しているATSUSHIさんに泣きついてしまって……。
ATSUSHI:(タイミング的に)俺もダメなんだけどって(笑)。
雄歩:ATSUSHIさんが「わかった、わかった。でも俺まだ出てないから」って(笑)。すみませんと言って。
高橋:ガマロックに限ったことではないけど、俺は塩竈の食っていう部分が若い人たちに広まるきっかけになっているかなって思う。まだまだ、塩竈の食は美味しいといえるものの、まだまだ認知が足りなかったり他地域の良さを知らない部分があって、それをどう広げていくかっていうのが課題ですね。
ATSUSHI:食に関しては、ガマロックでやることによって、笹かまと日本酒っていうのが再確認する意味があると思っていて。
平間:地元の人にとって、それらは日常だけど、知らない人にとってはすごく新鮮みたいで。ここの郷土食が。
ATSUSHI:3回やって、それがみんなに伝わっているんじゃないかって思うよね。みんなガマロックに来たことによって、笹かまと日本酒っていうのを記憶して帰るから。それは伝えるためには、いいんじゃないかなって思うよね。
平間:ガマロックの帰りに仙台駅とかで笹かまとか買って帰るのとかうれしいよね。
高橋:少しでも波及すればいいかなと思います。
佐藤:僕は1回目、すべての演目が終わって、主催者挨拶がATSUSHIさんと平間さんとであって、ATSUSHIさんの号泣が最初に起こり、それを見ている平間さんが泣いたのが印象的です。
ATSUSHI:そんなこともありましたね。
佐藤:演出とかじゃなくて、本当の想いが溢れた瞬間だったなと。
———昨年、一昨年もそんな感じでしたね。
ATSUSHI:バカにしてる?(笑)
———いやいや、2回目は平間さんが体調不良で登壇できなかったので、ATSUSHIさんがいろいろ背負っていた部分があったと思いますし、3回目は体調が良くなって登壇することができたりと。
ATSUSHI:まぁ、みなさんのおかげですよ。
彩:私は、アートでできることを見せるのってなんだろうって考えていますけど、会場までの沿道を彩るフラッグとかを立ち上げて、いろんな人が当日以外にも関われるよう、どれだけガマロックの意味を伝えられるかっていうのを課題にしていました。それを早い段階でできたのは幸いだったということと、それを継いでやってくれている人たちがボランティアを含めているっていうことがよかったなと思いますね。
ATSUSHI:回を増すごとに、想いを目に見える形にしていっているよね。フラッグとかも目に見えないそれぞれの想いを目に見える形で表現して、続いているのが素晴らしい。
———初めてくるお客さんもいると思うのですが、おすすめする楽しみ方があれば教えてください。
高橋:レジャーシートを持って来てください。
徳和:羨ましいよね、レジャーシートを敷いて楽しめるなんて(笑)。いいよねー。
平間:そうやってお昼寝するのもいいよね。芝生の感じが素晴らしい。
佐藤:あと、動物もいますしね。子どもが無邪気に遊べている雰囲気がいいなあって思いますよね。
平間:子どもやお年寄りがフジロックにはなかなかいないけど、ガマロックでは3世代ぐらいでもいけるのがいいと思う。
———Twitterなんかでも「お母さんがチケット買って来てくれた」なんていう投稿があったりと。そして、ガマロックでは小学生以下、70歳以上がチケット代無料ということもありますしね。
雄歩:友だちとかに「ガマロックってどんな感じなの?」って聞かれたときに答えるのが「お祭りと、休日に家族で公園へ行く感じの中間」って言っています。ボールとバットを持って来たら困るけど(笑)、週末に公園に行く感覚で来て、そこに来れば塩竈や東北の美味しいものを食べられるよ、と。
彩:1回目のときに年配の方がベンチに座ってくつろいでいたり、子どもが寝転んでマンガ本を読んでいたりしてて、それぞれの時間の過ごし方を許せる寛容さがあって、そのときに、これは10年続くなというか、すごく意味のある場をつくろうとしているんだなっていうのを感じて。音楽だけでもなくっていうのがいい。自由にくつろいでほしいですね。
平間:空間なんだよね。演奏を大事にするのがコンサートやライブだったりするけれども、ガマロックという場であり、空間であり。
徳和:1回目のときに、17時に「赤とんぼ」のチャイムが演奏中に鳴って、それに合わせてアーティストが即興で弾いてくれたんだよね。あれが街を許容してくれたって感じたし、場所を許容してくれたって思うし。ガマロックらしい。
ATSUSHI:ガマロックらしいよね。その場でなんとかしていくっていうのが。
平間:あと苦情なしもね。
徳和:ガマロックが続くか続かないかは俺としては、苦情だろうなと思っていたんです、実は。だから、1回目は可能な限りいろんな対応をやったんですけど、1回目はなんと苦情ゼロで、2回目は事故渋滞によって出演者が遅れたことがあり、終演時間が遅くなってしまったことで1件、3回目はゼロ。1回目が終わっときに市役所、警察に電話して苦情の確認したら、なかったということで本当に安心した。これなら続けられるなと俺自身は思いました。
ATSUSHI:なかなかないでしょ、苦情ゼロって。
佐藤:ないです(キッパリ)! やっぱり、屋外である程度の音量を出すので、しかもガマロックの会場の裏には民家があって、その環境で住民の方々の理解が得られないと、なかなかやっぱり難しいですね。そこをすごく理解していただいているんだなと実感しますよね。それってやっぱり実際に対応してくれている阿部さんや、塩竈市役所のみなさんがすごく丁寧に、いろんな環境、全体を見て対応していただいているからだと思うんですね。苦情がないのは、普段から地元に密着している阿部さんがいてこそだと思っています。
———それをアーティストのみなさんが理解していますよね。MCで細美武士さんが「苦情ゼロだったから、みんなでこの関係性を維持していこうね」って言っていたのが象徴的でした。中村達也さんも「こんなに音出していいのかな」って言っていたり。ガマロックを築くうえで、それがお客さんにも伝わるし、それを理解してもらっている。すごいなって思います。
ATSUSHI:あと、ガマロックに関わることによって繋がったり、生まれたり。けっこう、ガマロックが出会いのきっかけになっているのはうれしいですよね。
———ガマロックという枠を超えていろんな繋がりができて、お互いが支えになっていると思うので。
平間:いろんなことをやっても全部ガマロックに集約されるんだよね。例えば松島パークフェスティバルで高橋くんが飲食を手伝ったり、仮設住宅でのバーベキューもそうだし。いろんな各々の活動が全部ガマロックに集約されているよね。
高橋:それも、ガマロックがなければやれていないし、出会っていなかったよなと思いますね。ただ、ロックフェスを一日やるだけのために集まっているわけではないから。その想いがみんな共有できているのが素晴らしいかなと。
平間:前に福島県の須賀川というところでトークをしてきたんだけど、そのときATSUSHI、徳和、高橋くんとで行って。ガマロックを始める前に考えたんだけど、塩竈って被災をしているなかでも、市役所の機能が残っていたりという被害の受け方だったけど、被災している他地域に塩竈でやってきたことを伝えたいという想いがあって。須賀川でこんなふうにガマロックをやっていますという話をみんなの前でして、そこで参加者がすごく刺激されて、自分たちはこんなことがやりたいだとか、すごく熱くて。塩竈と須賀川が繋がったりとか、ガマロックが他のイベントのきっかけとかに広がっている感じがあってすごくうれしいし、ガマロックを始めた当初からそういうことができないかなとATSUSHIと話していた。
ATSUSHI:自分がフェスに出ていて、絶対主催者側としてやりたくなかったもんね(笑)。やる以上は、単なるフェスをやるつもりもない。ロックフェスをやるつもりじゃなかったんじゃない。ガマロックという“空間づくり”をしたかったんで。いまこのチームがうっかりそろって出会えたからできていると思うし。
雄歩:フリーライブをやった4.17の想いを10年間守っていこう、というところが共通意識にある。どうやったら最高のフェスができるか、ロックか、というところより、4.17から生まれたものをいかに大事につくっていけるかが軸にあると思うので。
徳和:脈略が全然ないんですけど、地元のチケットを扱ってもらっている店や町内会まわりだとかやると、大友康平さんの影響力はすごいですよ。今年も来るのね!って。
ATSUSHI: 塩竈ってそういう地元のシンボリックな人がいると違うよね。
平間: 康平さんも毎年出る気マンマンだよね。先日もTVでガマロックのことを話していたりと。
———以前にも、TVでは、ガマロックで配る小島蒲鉾店の笹かまなどを紹介していたり、ガマロックに出て、塩竈人だという意識がすごく伝わってきますよね。今年も楽しみです。
高橋:すごくうれしかったですね。
―――今年の注目ポイントがあれば教えてください
高橋:食では振る舞い酒ブースの充実を図りたいと思って、限定数でガマロックおちょこをつくろうと。あと、撮影ポイントとしてガマロックのロゴを使った飾り樽もつくります!
彩:アートでは目に見えるかたちでは大きくは変わらないんですけど、フラッグなどのボランティアチームに、チーフたちがやっているようなことを引き継いで、ある意味人材育成のほうに力を入れていきたいと思っています。これから長い目で見たときの、スタッフづくりというところに力を入れたいと思っています。今年は会場でもフラッグをワークショップでつくって、2016年のフラッグとして飾れるように来場者にも参加できるようにします。少しでも関わる人たちが内部の意識と同じようになっていけたらなと思います。フラッグは県道・市道の関係で掲げられる場所が限られていたりしますが、でもいつかは道をつなぎたいという思いはあります。今年に限らず、みなさんが気軽に参加できることを考えていきます。
ATSUSHI:うん、この愉快な仲間たちなら、いろんな人たちが来ても支え合えるだろうし、愉快な仲間たちがやっているガマロックなんでね。楽しみにしていてください。
一同:みなさま、お待ちしております!!