平間至 × ATSUSHI (Dragon Ash / POWER of LIFE) 対談 <前編>

お客さんもスタッフも笑顔に
みんなの居場所にもなったガマロック

想像をはるかに超えてあったかい雰囲気だった

———2012年にガマロックを初めて開催しました。それ以前からの塩竈との関わりも含めてどんな想いでいましたか。

平間:ガマロックの前に、2011年4月17日の塩竈でのフリーライブの経験があったわけだけど、震災後のああいう状況の中でライブをやることが初めてで、手探りの状態だった。でも、何もかも初めての中で、みんなの気持ちがひとつになった。たまたまPAがなかったから、観客全員で演者のまわりを丸く囲んで聴いて……。みんなの心がひとつになったっていうことがいちばん感じたことかな。本当に不安しかなかったと思うんだ、あのときって。その不安の中でちょっとだけ安心できたりちょっとだけ希望のようなものが灯されたんじゃないかなと。

———ガマロックが1日でもいいからみんなの居場所になればいいなと平間さんは開催前に言っていましたが、開催してみてどう感じましたか。

平間:震災で、たくさんの命と居場所が失われたことが俺にとって悲しいことだった。で、自分に今からできることっていうのは、1日だけでもみんなが安心して笑顔でいられるような場所を作ることじゃないかと思った。そういう居場所ができれば、その1日の思い出をもって、多少つらいことがあっても生きていくことができるんじゃないかなっていう想いでガマロックをやったんだけど、実際に開場してみて思ったのは、自分の想像していたものをはるかに超えてとってもあったかい雰囲気だった。それが自分でやっていて自分がいちばん驚いたこと。でもそれはやっぱりやる側がそういう想いをもって、スタッフみんなでやれたからそういう場を作れてお客さんにも伝わったんじゃないかなと。

———ATSUSHIさんは普段は演者ですが、こうやってガマロックをやってみて、どう感じましたか。

ATSUSHI:踊り手ですが、振り付けとかもするのでものごとを客観的にみるようにしているんです。俯瞰的にみるじゃないですけど。わかりやすく言うとサッカーの試合を上からカメラ撮って観ているような。そういう目で主催者としてやっていたと思います。一方でステージに立っていたときには、そういう視点ではまったくなかったですね。でもそういうことより、心のやすらぐ場所、みんなが笑顔になれる場所を作りたくて4月17日にもライブをやったし、それがフェスということに繋がって“ガマロック”っていうみんなに分かりやすいひとつのキーワードがつくれたっていうのはいちばんでかいと思っているし、それを1回目でみんなに浸透させることができたということがとてもうれしい。主催者、演者としてというよりはそっちの気持ちの方がでかいかなと。避難所とか仮設商店街とかでやってきましたが、それは不定期なもので、ガマロックフェスというものが年に1回、夏の終わりから秋の始まりぐらいのときにあるっていう定期的なものを作れてうれしいなって思う。

平間:ATUSHIと俺は基本的に表現する側だよね。そこにGIPのカツこと佐藤勝好がふたりと同じ立場でいてくれたっていうことがすごく大きくて。カツとは震災直後、3月22日に宮城県に来たとき、初めて会ったんだけど……。

ATSUSHI:カツは知り合いのアーティストの担当で、俺はカツと同い年。すぐに意見が合って、なんかやっていけたらいいねってなって、それで4月17日のライブも手伝ってもらった。で、そのとき、想いをちゃんとひとつにしてやったから、今度もカツに振っても絶対大丈夫だろうって思ったんです。

平間:例えば定期的にやることだったりとか、ある程度システムとしてちゃんとまわせることだったりとか。それまではちゃんと収支のことなんかも考えてなくて、本当に気持ちと勢いだけで一年半ぐらい動いてきて、本当にいいタイミングでカツと出会った。カツがやっぱりイベンターとしてのプロなので、ふたりの想いをちゃんと安定した形にしてくれたっていうのはとても大きいと思うな。

ATSUSHI:表面的には俺と平間さんの二者でやっているような見え方なんだけど、カツが二者の後ろでバックアップしている、つまり三者並列の図式がきれいにできていたから、うまくいった。もしカツが4月17日のライブにいなかったら、こうはなっていなかったと思う。

平間:それまでは、炊き出しでアーティストにはずーっとボランティアで来てもらっていたけど、ガマロックは今後も続けていきたかったので、そのためにはチケット代をいただいて、最低限ミュージシャンに出演料を出したかった。でもチケットが最初は売れなくて、そのときにカツと会う機会があって。彼はイベンターとしてプロだから俺より見えていた部分があると思うんだけど、「絶対に僕が赤字にはさせませんから」ってキッパリ。まったくチケットが売れていないのに、言ってくれたのね。それが本当にうれしかったし、ATSUSHIとか俺とかと同じポジションで一緒にガマロックを考えてくれているんだっていうのがそのときに伝わってきたんだよね。

ATSUSHI:まあ、表現者ふたりがフェスやるって言ってもそれだけなら、ダメだよね(笑)。たぶん。ダメというか、たぶんちょっと違う形にはなっていたはず。こんなふうに実現できていたかわからないよね。イベントという形として成り立ったのは、カツの力がでかい。

———カツさんと話していたんですけど、スタッフ全員が純粋な気持ちでやっていたからあんなにいいフェスになったって言っていて。私もそう感じましたし、その純粋な気持ちが観客に伝わったのかなと。

平間:「鏡の法則」っていって、撮られている人が笑顔だったら、間違いなく撮っている人も笑顔なんだっていうことを、よく写真の話をするときに持ち出すんだけど、つまり自分が笑顔になれば被写体も笑顔になる。フェスもまったく同じで、やる側もそういう気持ちだと、来たお客さんも当然そういう気持ちになるっていうことなんじゃないかな。

ATSUSHI:そう思います。

———そしてたくさんのスタッフがいたと思うんですけど、ふたりのいろんな出会いがガマロックに集結しているような気がします。

ATSUSHI:いい機会だったと思いますよ。それまではそういう機会がなかった。力が集まり始めていたけど、それをひとつにする場所がなかったから、それがつくれたのもでかい。

平間:それと、塩竈の若い人たちにとっても、いいきっかけになったと思う。自分の町のためになにかしたいという30代前後の人たちがガマロックで出会って、さらにどうしようか考えるきっかけになったと思う。それもよかった。なかでも小島蒲鉾の高橋英良くんは俺にとって大きな存在で、ガマロックでは飲食の部分をほぼ任せきった。それで飲食店の出店に当たっての保健所対応とかも全部やってくれて。たくさんスタッフはいるけど、自分にとって信頼できる人が地元にできたのは大きいかな。それでたぶん高橋君やみんなもガマロックを通して成長している部分があるし、ちゃんと自分たちに与えられた責任を必死でこなしてくれたっていう。

ATSUSHI:僕と平間さんが毎日のように塩竈に居られるわけではないので、現地に居る若手が率先して動いてくれている役割分担も相当でかいと思いますよ。

———活発になっていますもんね、交流も。

ATSUSHI:今後もそういう場所になっていったらうれしいな。それは最低限必須で、みんなの基地じゃないけど、一年に一回、心が安らいでみんなが集まる場所みたいな。それはずっと続けていきたいなと。それからいろんなことが連鎖して起きていってくれればうれしいし。

ガマロックの延長線上にみんなが集結してくれてうれしかった

———「連鎖する」という言葉が出てきましたが、ガマロック後のイブのイベントだったり2013年3月11日の塩竈でのイベントだったり、場所を変えてなおかつ人も変わったりしていますけど、地続きのような気がします。どんなふうにふくらんでいますか。

ATSUSHI:うん、ガマロックから続いていると思います。どういうふうにか……あんまり計算していないんですよね。

———計算していないんですか?! こうしようっていうのが先にあるのではなく、これをやりたいっていうのが先にあるんですか。

ATSUSHI:うん。せっかくこうやってみんなとやっているんだから、どんどんやりたいと思うだけで、別に計算してなくて。あとは俺ひとりの力でやっているわけではないし。そういうふうにみんなが協力してくれて、感謝しています。ガマロックの延長線上にああやってみんなとできて、それが12月24日の六本木ヒルズというわかりやすい所に集まって、メリークリスマスっていうことが俺はうれしかったなーと思います。すごく。あれこそものごとが始まったのは11月中旬から。みんなに連絡して、1カ月で準備。でもガマロックでやっているし、感覚はわかっているから。「まぁ、ATSUSHIが言うんだったら」ってこともあったと思うんですが、ガマロックをやっていなかったらあれはできていないんじゃないですか。

平間:ATSUSHIの魅力は計算しないこと。

一同:(笑)

———共演者から無茶振りがあるとかうかがっていましたけど(笑)、そういう計算なしだからこそ、その場その場でのエネルギーが生まれると思いますね。

ATSUSHI:そのほうがおもしろいと思うんだよね。みんなの本性も出てくるし、あと、俺から強制するのが嫌だから。みんなに自由にやってもらいたいのもあるから、計算してないっていうのもあるかもしれないし、自分が「ああやって、こうやって」と指示されるのは嫌だから。だったらみんなに自由にやってもらいたいし、計算してその通りだったらあんまりおもしろくないんじゃないかって。計算とは違うことが起こったらみんな対応できないと思うんだよね。やっててそっちのほうが表現としては健全かなと自分は思っている。

平間:だから、一人ひとりの力量が問われるよね。

ATSUSHI:かなり問われてくるっていう(笑)。

平間:場慣れしていない人はたぶん難しいんじゃない、きっと。

ATSUSHI:でもみんなそれなりにやってきている方々なのでね。こう、表現者だったらもちろん写真や踊りもそうですけど、ぐちぐち説明するよりは、もう表現で会話したほうが話は早いので。だからそういうふうにしています。

———イブのライブで、最後に出演者が勢揃いした演奏もすごかったですね。

ATSUSHI:平間さんが太鼓を叩いてね。

平間:そう、腹太鼓でね(笑)。

(ガマロックに出演したアーティストのうち、遠征してきたアーティストもいますが、やっぱり地元でやるのと東京でやるのでは違うと思うので、それもよかったですよね)

平間:特にガマロックにも出演したBRIGHT KIDS(多賀城小学校)にとって最高の場だったと思うよ。あれは。だってね、小学生でさ、いきなり六本木ヒルズでのライブには出られないよ(笑)。

ATSUSHI:中村達也とツインドラム。ありえないよ。

一同:(笑)

ATSUSHI:頑張ればどうにかなるんだってことをわかってもらいたかったこともある。BRIGHT KIDSももちろんガマロックでも頑張っていたし、今後も、頑張ればどうにかなるんだっていうことをわかってほしかった。帰りの新幹線では相当興奮していたみたいですけどね。「夢のようだ……」って。

平間:ガンバロック。ガマロックでガンバロック!

一同:(笑)

ATSUSHI:ガマロックでのあの雰囲気を、東京の六本木ヒルズっていうところでみんなに示したかったこともちょっとあるとは思います。やっぱり。みんなよく集結してくれましたよね、いやぁ、暇人が多いなと思いますね(笑)。イブなのに、みんな何やっているんだ……ってね。

平間:確かにそう考えられるよね、デートはどうなんだとかね(笑)。いやいや、みんなATSUSHIのためにね。

ATSUSHI:大感謝ですよ。

———そうそう、塩竈からも来てくれて人たちもいましたしね。あ、お久しぶりです、なんていう人もたくさんいたので。

ATSUSHI:そうだね、それもうれしかった。ガマロックと基本的な考え方は変わらないですよね。みんなの集う場所になればいいと。

平間:あとね、六本木の楽屋に塩竈の小島蒲鉾が山のようにあったのがうれしかった。

———美味しかったですね! 2013年3月11日のライブでは、塩釜高校のブラスバンドも参加して、大所帯になってきていますね。ほほえましいというか。

平間:そう六本木ヒルズでも「ほほえましい」という言葉がピッタリだったかもしれない。うん。その感じがいいんですよ。BRIGHT KIDSの演奏をプロのミュージシャン達が目を細めて見ている感じがよかった。

ATSUSHI:あのステージの雰囲気とかも本当によかった。全員大集合で。

———最後にバラの花が配られてお客さんもすごくうれしそうな顔をしていました。

ATSUSHI:用意しましたね〜。2日前にバラの花を1000本。なかなか大変でしたけど、みなさんが協力して用意してくれて。ちょっとお金はかかりますけど……。

平間:バラの花を栽培していたほうがいいよね。

———毎回、パワーオブライフのライブではバラの花を用意しているんですもんね。

ATSUSHI:バラ園作ろうかな……。

平間:もっと安い花にしたほうがいいんじゃない?かすみ草とか。

一同:(笑)

ATSUSHI:花の話といえば、2011年の敬老の日かな、塩竈のガス体育館でイベントがあって、そのときも踊って花を用意したんですよ。赤と黄色と白と。年配の方が多い中で、こぞってまず赤の花を持っていくんだよね。何本かもらう人もいたんだけど、「一本限りね!」って言って(笑)。

———活動している場で、世代を選ばないですよね。ガマロックもそうでしたけど、子どもから年配の方もいらっしゃったり。ツイッターでは「三世代で行きます!」とかありましたし

平間:そうだよね、子どもからお年寄りまで。すごくうれしかったよね。あとね、ガマロックでは小学生以下は無料だってことは伝わっていなかったみたいで、あとから知ったという人もいたみたい。今年は70歳以上が無料に。小学生以下と70歳以上は無料となります。

ATSUSHI:フェスで、親子三代で来られて動物もいるってフェスはないです!

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