平間至 × ATSUSHI (Dragon Ash / POWER of LIFE) 対談 <後編>

観客、アーティスト、スタッフの垣根を越え
全員参加型のガマロック

塩竈の魅力、音楽への想い、お互いのやっていることのバランスがよかった

平間:そう、ガマロックで出展した犬や猫たちの孤児院「日本アニマルトラスト」を通して、里親を募集していたクロミツ、コミツまでうちに来て。ビックリだよね。娘が犬をほしいって言っていて、最初は柏のアニマルシェルターに行ったんだけど、なんだかピンとこなくて。それで大阪府豊能郡の山の中にある日本アニマルトラストの「ハッピーハウス」に連絡して、引き取ったら妻がメロメロ。犬も妻にメロメロ。ATSUSHIもその相思相愛っぷりにビックリ。すごいよね。

ATSUSHI:俺としてはすごくうれしいですね。例えば「平間さんちに」というほどの計算はしていなかったけど、参加してもうらことによって何かしらの出会いがあって、どこかでこうなったらいいなって思ってた。だから、結果論としてこうなってくれてめちゃめちゃうれしいです。

平間:計算はできないからね(笑)。

ATSUSHI:したくてもできないからね(笑)。

平間:あと、しおがま文化大使の畑中みゆきさんは60kgぐらいの大きい犬「マスティフ」を引き取ったんだけど、みゆきさんは引き取るに当たって「一番飼いづらい犬をちょうだい」って言ったらしいんだよね。さすがだなって。

ATSUSHI:平間さんちに行った2匹は今後、看板犬になるんじゃないですか。その犬たちももしかしたら役割のひとつだったかもしれない。さまざまな理由で保護された動物たちがたくさんいるんだってこととか、捨てられたペットたちが殺処分されている現状とか。もっと世の中の人たちが知れば命も救われるだろうし、出会いも増えるんじゃないかな。

平間:「ハッピーハウス」に行ったら、700〜800ほどの保護された犬と猫がいて。本当にきれいですごく環境がいい。ビックリするぐらい。でも保護されて入ってくる数と引き取られて出て行ける数を考えると、なかなか難しいだろうなって思って。

ATSUSHI:日本じゃなかなか経営とかが難しいし、そういうことも知ってもらえたらって思う。知ってもらうことによってどんどん状況が変わっていけばいいな。平間さんに引き取られた2匹が何かのきっかけになってくれたらうれしいですね。

平間:震災直後、いろんな人から連絡をもらって、ATSUSHIと塩竈へ行こうと思ったのは、ATSUSHIがそういう活動を震災前からやっていたことが大きいかな。動物を含めた「命の大切さ」を自分の責任をもって活動するATSUSHIとだったら、自分だけで地元に戻るよりも広がりがあるんじゃないかなって何となく思って。それが結果としてガマロックになっていった。

———初めてのガマロックを開催するにあたって、塩竈市が後援として協力してもらえたこともよかったですよね。

平間:うん、塩竈市が全面協力をしてくれたことがすごく大きい。公園の使用から、ゴミの処理までを全部やってくれたりとか。さまざまな気配りをもって市がやってくれたことは大きいかな。

ATSUSHI:楽屋で市役所の阿部徳和さんが終わった後にゴミ拾いをすごくしていて、ちょっとグッときましたね。

平間:そうそう、冗談みたいな話だろうけど「ゴミは全て任せろ!」というぐらい。

ATSUSHI:周りの家に挨拶に行ってくれていたりとか。

平間:公表する前から近所の住民に何回も挨拶に行ってて。最初の段階ですごく喜んでいてくれていたみたいだけど、イベントをやるにあたって住民とこじれちゃうと大変じゃない。そして、これだけ大きい野外イベントをやって、市としてもGIPとしても、苦情が1件もなかったのは初めてだったと。でも塩竈湾を挟んだ東塩釜駅近くの藤倉周辺まで音が聞こえていたらしくて。

ATSUSHI:HOUND DOGのときにね。

平間:それまではなんとなくお祭り騒ぎのような音が伝わっていたみたいだけど、HOUND DOGのときは歌詞まで聞こえたって(笑)。アコギを弾いているのに、エレキみたいな音だったと聞いて、「あれぇ?アコギだったはずだけど!」って(笑)。

ATSUSHI:それで苦情が来なかったんですから、本当に感謝ですよね。市も含めて、みんなの役割分担が本当にきれいにはまったんじゃないですか。

平間:各々の立場で本当にやりきったということだと思うんだよね。ガマロックは。

———そういえば、あの会場を選んだのはなにか計算があったんですか。フェスのイメージって、だだっ広いのがまずあったのですが。親密感を大切にするっていうことも含めて、あの会場にしたんですか。

ATSUSHI:あの会場になったのは塩竈市役所の人の推薦で。違う会場でやろうとしていましたけど、あの会場になったのもよかった。計算はしていないですけど、画は見えていました。見えてなければやらない。ガマロックも六本木ヒルズのときもそうだけど、最終的な画はこうなるだろうっていうのが見えて、それをみんなで作っていく。物理的なイメージというよりも、お客さんの感じ方としてのイメージです。

———平間さんが描いていた画とはなんですか。

平間:やっぱりみんなの笑顔かな。笑顔のイメージが強かった。うん。

ATSUSHI:よかったですよね。みんなが笑顔で。笑顔だったから一日が早かった。

———オブジェクトなどのアートやワークショップも盛りだくさんで、たくさんの人たちが楽しんでいましたね。

平間:塩竈には美味しい食べ物がある。アートも盛ん。「塩竈フォトフェスティバル」を以前からやっていたりと……。ロックフェスといいながらも、食とアートで楽しめるほうがいいよねって自覚しながらバランスをとっていったところはあるよね。半分は飲食、半分はワークショップやアートがあったりとか。あとは出店の話でいえば、安くてすごく美味しかったって言われて、それがすごくうれしかったかな。楽屋でも、出演者のみんなから美味しいと言ってもらえたりとか。

ATSUSHI:バランスはかなり気にしてやっていましたよね。

平間:もし音楽寄りの構成だったら音楽が全面に出ていたんだろうけど。でも、やっぱり音楽はATSUSHIと俺にとって中心にあって、音楽なしではATSUSHIは踊れないと思うし。俺は、音楽は純粋に好きで、写真は自分自身。いろんな要素があるなかで塩竈の魅力、音楽への想い、お互いのやっていることのバランスがよかったんだと思う。

ATSUSHI:あのバランスなら全員参加型になれますよね。他のフェスだったら、音楽に付属されて飲食ブースがあったりとか。ガマロックはそうではないので。全員参加型ならみんなの気持ちは高まるし、スタッフのやりがいも出てくるし、塩竈らしさが出てくる。

———郷土色が豊かで、そこに塩竈が感じられました。

平間:そうそう。

ATSUSHI:楽屋も雰囲気よかったですよ。

平間:すごくうれしかったのは、出演したmitoくんが言ってくれたことなんだけど、「俺らはいろんなフェスに行っているから、楽屋の雰囲気だけでフェス全体がいいかどうかが一瞬で分かっちゃうんだよね」って。まあ、それはすごくガマロックの雰囲気がいいっていうことなんだけど(照)。それが一瞬で伝わってきたっていうことを言われてすごくうれしかった。

ATSUSHI:本当にそうなんですよ。楽屋の雰囲気がステージにすごく出るんですよ。いいフェスでは、最後までみんな帰らないですよね。

平間:客席側に行かないミュージシャンも多いよね、きっと。行く人もいるだろうけど。そういうことを考えると、滞在時間のほとんどが楽屋とステージ。

ATSUSHI:であれば、楽屋の雰囲気はそのまんま出ますね。

平間:でもそのmitoくんは楽屋を抜けて市内の亀喜寿司に行ったっていう……(笑)。あれ、mitoくんいない! 実は亀喜寿司に行ったと。「楽屋最高!」って言いながら亀喜寿司(笑)。以前、mitoくんが組んでいるクラムボンのボーカル・原田郁子ちゃんをそこに2回ほど誘ったことがあって、美味しいっていうことをmitoくんも知って、絶対行かなきゃって思っていたらしくて。

ATSUSHI:みんながマイペースに楽しんでくれてよかったと思いますよね(笑)。

平間:打ち上げもね、本当によくて……俺にとって一番うれしかったのは打ち上げかも。出演者と地元スタッフとの垣根がなかったじゃん。だって、東京の打ち上げではあんなになじまないよ。

ATSUSHI:あれもガマロックの良さだったんじゃないですか。

平間:最後の〆の言葉でmitoくんがグダグダで(笑)。グダグダになったのを細美君がビシッと締めたっていう。あれはどちらも見事(笑)。なんだかガマロックらしい瞬間だったと思う。

ATSUSHI:あれも大切にしていきたいですね(笑)。

震災直後にやったライブのときの初心を忘れずに

———1年目にしてたくさんのうれしい声をもらいました。期待している人もたくさんいるんじゃないかなって思うんですけど、今年の抱負や構想を教えてください。

ATSUSHI:初心を忘れずにと思っております。

平間:うまくいったのでその分気持ちをブラさず初心を忘れずに。初心はやっぱり第一回ガマロックではなくて、震災後にやったライブなんだと思う。フェスの規模になると大人数の人が関わるから、どこかでブレていったりすることがあると思うんだけど。それでもATSUSHIとカツとのバランスがすごく絶妙で、どこかでブレたりすると誰かが軌道修正してくれたりとか、絶妙に3人が補間し合っている。

ATSUSHI:3人というのはでかいんですよ。役割も違うし、考え方も違うし。そのなかでブレないようにやっていきたいと思いますね。そしてなるようにしかならないっす。結局、頑張るしかないねと。余計に考えたり計算してもしょうがないし。2、3、4回目も謙虚に頑張って、ブレずにやっていけばなにか味方をしてくれるのかなーと思ったりする。これが調子に乗り始めたら……怒られると思うし、そうはならずにやっていこうと。

平間:昨年は天気も味方してくれて。当日の朝まで雨が降っていて、翌日も土砂降りだったんだけど、もともと天気だけは根拠のない自信があって、みんなから「大丈夫ですか」と言われても、「大丈夫、大丈夫。普段も晴れ男だから」って言っていました。でもガマロックの翌日になってから焦って「雨だったらどうしたんだろう!」って(笑)。

ATSUSHI:いつかは雨が降る可能性もありますからね。まぁ、それも受け入れてやっていけるのがいいのかなぁと。

平間:フジロックなどもそうだけど、フェスがしっかりすると雨が降っても揺らがないと思う。

ATSUSHI:そのためには俺らがブレないようにやっていきたいとは思いますよね。軸がブレるとみんなもブレていくと思うので。グラッグラにならないようにしたいなとは思っているかな。

———そういえば昨年人気だったタワレコとコラボのガマロックポスターは今年もやるんですか。

平間:今年もやります!

ATSUSHI:あれとかも、10年続けていったとして……例えば昨年はカップルで撮った人が今年は子どもがひとり居て、翌年はまた増えてとか……。もちろん友だちとでもいいんですけど、ポスターを並べて家に貼ってもらえたらうれしい。

平間:……そしたら相当壁が必要だよね(笑)。

一同:(爆笑)

ATSUSHI:部屋中がガマロックのポスターだらけとなってしまいますけれども(笑)、そういうようになってくれればいいなと思いますよね。あのポスターも。それこそ最後に撮った出演者との一枚、まだ平間さんは心配顔でしたけれども、いいポスターでしたね。

平間:あれもね、ガマロックを象徴している感じだよね。

ATSUSHI:なかなかないですよね。一枚のポスターで全部が伝わるっていうのは。空気を含めて。だからすごいと思いました。

平間:楽屋で撮ったあの一枚に写っているメンバーが最後の最後まで残っていたんだもんね。いいフェスは楽屋滞在時間が長いというし、それが写真に表れたってことなんだね。

———さて、今年は塩竈フォトフェスティバルもありますよね。

平間:フォトフェスは9月13〜23日。ガマロックは22日なので、フォトフェスの期間中にガマロックがあって、ガマロックを観に来た人が翌日、フォトフェスとかワークショップに参加できる感じにしたい。2つのイベントスケジュールが重なることで自分は大変になるんだけど、遠くから来たお客さんのことを考えたらね。あと、2つのイベントを同時期にやることで「塩竈は頑張っているな」とか「発信しているんだ」とか周りの町や宮城県に伝わったらうれしいかな。まぁ、常に自分のことは置いといてと思っていたんだけれども、体調がもう危ない(笑)。自分のことを置いておけないことに気付いて。「俺が頑張ればいいか」と思って、身体のことは今まで考えずに生きてきたんだけど、そういうわけにはいかないんだと。

ATSUSHI:これだけチームメイトがいればね、無理せずに役割分担で平間さんが1人でやることとみんなでやることが分担できるので、無理せずにやってください。

平間:最後のスピーチはATSUSHIに任せてね(笑)。

ATSUSHI:頑張ります、頑張ります!参加してくれるみんなには、十人十色、それぞれの塩竈を感じていただければうれしいなと思いますね。今年は塩竈に拠点がつくれているので、その周辺の多賀城、七ヶ浜、松島、利府とかともなにか一緒にできるようなところを探していこうかなと。ガマロックを通して、何かみんなと一緒にできることを。

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